円筒絞りの基本

6・円筒絞りに於ける応力



基本的な絞り加工である円筒絞りの機構は図1に示す通りである。 素材(ブランク材)をダイの上に載せ、しわ押さえに圧力を与え素材を抑える。 ダイ穴にパンチを押し込むと素材は塑性変型を受け円筒状の容器に成形できる。


ダイの穴壁面と上端面との間は曲面でつながれている。この部分 をダイ肩部という。一方、パンチの底面とパンチ円筒壁面の間が曲面になっているが、これをパンチ肩部という。 またパンチの押し込みによって成形された円筒部分の壁面を側壁面、しわ押えで抑えられた素材の部分をフランジ部、パンチで押 し込まれて容器の底になった部分をパンチ底部という。


フランジ部分は成形が始まるとその外周部は圧縮応力を受けるために縮 もうとし、しわ又は面歪みなどが発生する。しわ押えはそれを防ぐためにある。 この縮みの原因はパンチの押し込みによって素材のフランジ部分が半径方向に流れる(縮む)のが原因である。


一般に、素材の流れや張力を制御することを目的として、しわ押え部にビードが設け られる。 ビードはフランジ部分に窪みを作ることにより、フランジを変形させ、流れを止めてしわの発生を押える効果がある。 その形状はいろいろなのものがあるが、ダイ穴輪郭線の全周か、一部に設ける一対の凹凸である。




円筒絞りでは素材に、図2に示す様な応力(ひずみ)が発生し、次の様な現象が見られる。 フランジ部は、パンチによる引張りにより形状が変化し、矢印方向に圧縮力が働き、ダイ肩で曲げられて穴に絞り込まれていく。 フランジ部には、圧縮力が働き、圧縮ひずみが発生するため、フランジ部では板厚が増加し、しわが発生する。


しわ押え力が小さいと、しわが発生し、反対にしわ押え力が大き過ぎると、側壁の引張り応力が素材の引張り強さを越えるため、絞り底面が破断する。



円筒絞りの機構



円筒絞りに於ける応力